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裁判例 解説紹介

入院中の患者がパンで窒息した場合に、患者の動作を確認すべきだったとして病院の責任を認めた判決

東京地裁9月11日判決(加藤正男裁判長)が、くも膜下出血で入院中の66歳の患者が蒸しパンを喉に詰まらせて後遺障害を負ったのは、適切な介助を怠ったとして、東京都足立区の医療機関の責任を認めて4804万円の賠償を命じました。

患者は入院5日後、昼食の蒸しパンをのどに詰まらせて窒息し、呼吸停止となりました。その後、患者は血管性認知症と診断されました。

東京地裁判決は、パンについて「窒息の原因食品として上位に挙げられ、リハビリテーションの現場では広く知られている」、「食べやすい大きさにちぎり、男性の動作を観察するべきだった」と判示しました。

この点、厚生労働省の研究報告によると、消防署本部の回答の分析において、原因食材としては穀類が最も多く211例、そのうち「もち」が77例、「米飯(おにぎり含む)」が61例、「パン」が47例、「粥」が11例となっています。

この種の裁判例は少なくなく、最近の裁判例としても、大阪地裁平成25年5月22日判決が、介護施設利用者が食事中の誤嚥で死亡した事故について、事業者側の安全配慮義務違反を認めたものがあります。

この事案は、介護付き有料老人ホームにおいてロールパンを誤嚥して窒息したものでした。

いずれにしろ高齢化社会が急速に進展している日本。

法律紛争の分野でも高齢化を反映した相談が増えており、医療過誤・医療事故においても、高齢者の院内や介護施設における転倒、誤嚥による窒息等の相談が増えている実感があります。

逆にいうと事故類型は概ね予測できるわけです。特に介護施設等においては責任者・医師が、公表されているヒヤリ・ハット事例や裁判例を自ら学び、院内で従事者に周知徹底することによって、少なくとも重大な医療過誤は回避できる可能性が高まると思います。

ちなみに医療機関側の弁護士というのは、医師会であったり、保険会社の顧問弁護士が大半であるため、人数が極めて限られており、事故・トラブルが発生してからの登場となることが通常。

その意味で日常アドバイスを受けることができる自前の顧問弁護士は抱えていない医療法人は結構あります。

もう少し医療機関・介護施設も弁護士を活用し、医療過誤防止のための事前の取り組みに本腰を入れる必要があるようにも思います。

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