医療過誤訴訟の統計はどのようなものでしょうか。医療過誤の相談でも良く尋ねられますし、各大学での講演でも説明する基本的な傾向を解説します。
まず毎年提起される裁判の数(新受件数)をご説明します。
平成4年に370件だった全国の医療過誤訴訟は、右肩上がりに上昇を続けました。平成6年には初めて500件、平成10年には600件を超えます。そして平成16年には1110件に達しました。
この平成16年をピークに減少が始まり、現在は800件前後を推移しています。
医事関係訴訟の新受件数
次に医療過誤訴訟の平均審理期間を見てみましょう。
24.9か月となっており約2年になっています。以前は3年近くかかっていましたので1年ほど審理期間が早まったことになります。
とはいえ、第1審訴訟の平均が6.8か月、過払い金訴訟を除く平均が8.3か月ですので、通常の裁判よりは長くかかっています。
平均審理期間(医事関係訴訟及び民事第一審訴訟)
では医療過誤訴訟の認容率はどうでしょうか。
通常の裁判が8割以上の勝訴率であるのに対して、医療過誤訴訟の勝訴率は3割を切ります。それだけ専門的な分野、難しい分野ということになります。
地裁民事訴訟・医事関係訴訟の認容率(平成16年~平成25年)
最後に新科目別の件数を見てみましょう。
「内科」、「外科」、「整形外科」が多いのが分かります。続いて「歯科」、「産婦人科」と続きます。各科にまたがる訴訟も少なくありませんので「その他」も多くなっています。
この中で特徴的なのは「産婦人科」です。産婦人科だけは一貫して減少傾向にあります。産科医療補償制度が導入された影響も考えられます。
医事訴訟の診療科目別件数(平成23年~25年)
医療過誤訴訟は他の一般的な訴訟とは異なる傾向があることをご理解頂けたと思います。
私も20年以上医療過誤訴訟に取り組んできましたが、このような統計も随時分析を続けた上、日々の研鑽を心がけています。