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医療ミス・医療過誤・医療事故Q&A(質問)

医療ミス・医療過誤・医療事故の法律相談 Home > 医療事故・医療過誤・医療ミスのメディア情報

医療事故・医療過誤・医療ミスについて新聞・テレビ等において報道されることがあります。

2017年現在、医療過誤裁判は全国の裁判所に年間約800件ほど提訴されています。また解決の平均審理期間も3年から2年余りに早くなっています。要するに医療過誤訴訟の全てが報道されているわけではありません。

患者に重大な結果が出て医療機関が自ら謝罪会見をしたり公表した場合、逆に患者・遺族が記者会見をして被害を訴えた場合、県立病院など賠償金を支払うためには行政としての予算措置が必要となり、その結果として公になる場合などに限られます。

それでも患者・家族が自分にされた医療について考える一つのきっかけになることもあると思います。

そこでこのコーナーでは、メディアで報道された医療事故・医療過誤・医療ミスについて目にとまったものをまとめています。

実際に古賀克重法律事務所に法律相談に来られる医療事故被害者の中にも、類似ケースについての新聞記事を握りしめて来られる方がおられます。

ただし、例えば、「過失(注意義務違反)」については、診療当時のいわゆる臨床医学の実践における医療水準とされています。したがってまず「時期」によって、過失判断が異なる可能性があります。

またこの医療水準は、診療に当たった医師の専門分野、所属する医療機関の性格、その所在する地域の医療環境等の諸般の事情を考慮して決定されます。つまり、主治医の専門分野、受診していた医療機関が総合病院か個人のクリニックか、大都市か地方都市か等によっても、過失の判断は異なる可能性があるわけです。

さらにそもそも各患者の診療経過・年齢・既往症によっても、「過失」だけでなく、「因果関係」や「損害」に対する判断は異なってきますので、あくまで参考程度にして頂ければと思います。

なお日付は報道日ですが、全文は引用せず、また内容についても弁護士の視点で言い回しを変えているところがあります。また医療機関がホームページで事故内容を公表しているケースについてはその情報にも触れるほか、弁護士としてのコメントも一部添えています。

2018年

  • 眼科判決

    8月9日レーシック手術で説明義務違反を認定して東京地裁が約100万円の賠償命令

    近視を矯正するレーシック手術をクリニックで受け網膜剥離になったと主張するケースについて、東京地裁(佐藤哲治裁判長)が2018年8月9日、医師のリスク説明が不十分だったとして過失を一部認め、約100万円の賠償を命じました。

    判決によりますと、女性患者は、手術前検査で左目の網膜に傷があることが判明しましたが、医師は「手術は可能」と説明してレーシック手術を実施。術後に別のクリニックで網膜剥離と診断されたものです。

    東京地裁は、「医師が網膜の傷を指摘しながら、傷から網膜剥離を発症するリスクや手術の影響などについては説明しなかった」と指摘し、説明義務違反があったと認定しました。その上で「網膜剥離はもともとあった傷が手術で進展したものと考えるのが合理的」とし、「医師から網膜剥離に関する見解などの説明を受けていれば手術を受けることはなかったと認められる」と判断したものです(2018年8月9日日経新聞等)。

  • 産科判決

    帝王切開遅れの過失を認定して、広島高裁岡山支部が医療機関に1億3000万円の賠償命令

    帝王切開の判断が遅れた上、出産直後の蘇生処置が適切に行われなかったため、子に脳性麻痺などの後遺障害が残ったケースについて、広島高裁岡山支部は2018年7月26日、医療機関に対して約1億3000万円の支払いを命じました。

    広島高裁岡山支部は、出生前に子に生じた心拍数低下について、医師と助産師が産科ガイドラインに応じた対応を怠ったとして、「帝王切開が遅れた過失がある」と認知しました。
    その上で、遅くても約30分早く帝王切開を実施していれば、「子に障害が残らなかった高度の蓋然性が認められる」として因果関係も認定しました(2018年7月27日山陽新聞等)。

    一審判決は蘇生措置で不適切な点があったとしながら、帝王切開の遅れの過失も認定していませんでしたから逆転勝訴判決になります。

  • 産科判決

    7月11日胎児死亡で注意義務違反を認めて徳山地裁が1409万円の賠償命令

    搬送先で緊急帝王切開手術を受けたものの子が死産したケースについて、徳島地裁(川畑公美裁判長)は2018年7月11日、産婦人科医院に対して約1409万円の賠償を命じました。

    母親は妊娠31週だった2013年3月中旬、切迫早産の兆候があると診断されて産婦人科医医院に入院しました。主治医が「常位胎盤早期剥離」と診断した後、他の医療機関に搬送。救急搬送先の病院が緊急帝王切開手術を実施しましたが、子は死産だったものです。

    徳島地裁は、主治医が胎児の健康状態を判定する検査において、心拍異常を読み取ることが可能だったと判断。そして常位胎盤早期剥離を早期に疑い、心拍の異常の原因を調べるための鑑別診断を実施する注意義務があるにもかかわらず怠ったと過失を認めたものです。
    その上で、鑑別診断をしていれば、胎児が生きたまま生まれる高度の蓋然性があったとして、因果関係も認定しました(2018年7月12日朝日新聞等)。

  • 眼科判決

    5月23日白内障手術による視力喪失に対して鹿児島地裁が1723万円の賠償命令

    白内障手術で70代の女性患者の左眼が失明状態になったケースについて、鹿児島地裁(秋吉信彦裁判長)は、眼圧が高くなったのにもかかわらず医師が手術を続行した過失を認定して、2018年5月22日、医療機関と主治医に対して、1723万円の支払いを命じました。

    女性は左目の白内障の手術を受けた際。手術中に眼圧が上昇しましたが、医師が手術を続行しました。術後、女性が別の病院を受診したところ、網膜剥離と診断され、左目がほぼ見えなくなり、視野も通常の半分程度になってしまったというものです(2018年5月23日読売新聞等)。

    鹿児島地裁は、「医師は患者の眼圧が高くなった時点で手術を直ちに中止して、手術を延期する注意義務を負っていた」にもかかわらず怠ったとしてと医師の過失を認定した上で、「網膜剥離は、手術を中止していれば生じなかったと推認するのが相当」として因果関係も認定したものです。

  • 内科判決

    5月9日薬剤投与後に大量出血し死亡したケースについて、鹿児島地裁が約1000万円の賠償命令

    医療ミス訴えた裁判 病院側に1045万円の支払い命じる判決

    鹿児島市の病院に入院していた男性が死亡したのは医療ミスだとして、遺族がおよそ2000万円の損害賠償を求めていた裁判で、鹿児島地方裁判所は9日、病院側に1000万円あまりの支払いを命じる判決を言い渡しました。

    糖尿病治療で入院していた80代の男性患者が、薬剤の投与を受けた後、大量に出血し死亡したケースについて、鹿児島地裁(日景聡裁判長)は、「カテーテルとキャップの接続部分が確実に締まっていれば、事故は発生しなかった」として、医療機関の過失を認め、1045万円の支払いを命じる判決を言い渡したものです(MBC南日本放送など)。

  • 救急医療判決

    3月28日救急搬送された中学生死亡事案でCT検査を行うべき過失を認定、東京高裁が3200万円の賠償命令

    長野県安曇野市の少年(当時13歳)が脳ヘルニアによって死亡した事案について、東京高等裁判所は2018年3月28日、少年が救急搬送された波田町立波田総合病院(現・松本市立病院)が適切な検査を怠ったものであると注意義務違反を認めました。

    横浜市所在の遺族が松本市立病院を運営する松本市及び担当医師に対して約7200万円の損害賠償を求めていたもの。
    1審の横浜地裁は原告の請求を棄却したため、遺族が不服として控訴していたものです。

    詳細は弁護士古賀克重ブログで解説しています。
    救急搬送された中学生死亡事案でCT検査を行うべき注意義務違反を認定し患者逆転勝訴、東京高裁が3200万円の賠償命令

  • 心臓血管外科判決

    2月16日腹部大動脈瘤破裂で注意義務違反を認めて広島高裁が約3200万円の賠償命令

    60代の男性が腹部大動脈瘤破裂で死亡したケースについて、広島高裁(野々上友之裁判長)は2018年2月16日、独立行政法人山口県立病院機構に対して計約3200万円の支払いを命じました。

    広島高裁は、死亡後のCT画像や診察時の患者の主訴に基づいて、診察時点で大動脈瘤は破裂していたと認定しました。その上で、主治医が、患者の訴えや症状から大動脈瘤破裂を疑うべきであり、CT検査を実施すべき注意義務違反があったと認定したものです(2018年2月17日朝日新聞等)。

  • 歯科

    1月15日虫歯治療で2歳女児が低酸素脳症に陥り死亡、警察が捜査

    福岡県内の小児歯科医院で虫歯治療した患者(2歳)が2017年7月、治療直後に低酸素脳症を発症して、2日後に死亡したことが判明しました。

    歯科の医療事故では、説明義務を巡るトラブル、インプラント、抜歯・補綴治療、麻酔時の事故などが見受けられます。
    また抜歯に関する注意義務としては、抜歯の適応、手技上の注意義務違反、説明義務違反などが争点になっています。

    本件については詳細な診療経過が不明ですが、一般的には、歯科医院が事前の問診義務を尽くしていたか、局所麻酔の手技に問題がなかったか、麻酔後の経過観察が妥当であったか、さらに転院義務違反がないか、仮に経過観察を行い適時適切に転院させた場合に救命の高度の蓋然性があったのか等が問題になってくるでしょう。

    詳細は弁護士古賀克重ブログで解説しています
    福岡県内の歯科医院の虫歯治療で2歳女児が低酸素脳症に陥り死亡、警察が捜査

2017年

  • 歯科(労働)判決

    12月23日育休を拒み退職強要の歯科医院に700万円の賠償命令

    育休取得の手続き中に退職させられたとして、歯科衛生士の女性が勤務先の東京都内の歯科医院に対し、地位確認と約800万円の損害賠償を求めた訴訟において、東京地裁は2017年12月22日、従業員としての地位を確認した上、慰謝料200万円を含む約700万円の支払いを命ずる判決を下しました。

    女性は2015年9月から産休に入って11月に出産しました。産休中から育休取得を申請しようとしたが手続きを拒まれ、2016年1月には退職願用紙が送りつけられた後、自己都合退職扱いとされていました。

    東京地裁、は「マタハラ根絶の社会的要請も高まっている」と指摘した上、「理事長が『産休を取る者は賞与を請求しないのが普通』との独自の見解を持っていた」「育休取得などの権利を侵害した」と認めました(2017年12月23日付け朝日新聞等)

  • 脳神経外科示談

    11月28日脳動脈瘤を下垂体腫瘍と誤診して患者死亡したケースについて2700万円で示談

    彦根市立病院で、昨年10月に脳神経外科で下垂体腫瘍の手術を受けた市内に住む70代後半の女性が、出血性ショックで死亡したと発表した。脳動脈瘤(りゅう)を下垂体腫瘍と誤診したことが原因で、遺族に対し2700万円の慰謝料を支払う。市が12月議会に提案する。

    70代後半の女性患者めまいやふらつきを訴えて病院を受診した後、彦根市立病院へ転院しました。CT画像から、脳神経外科の専門医4人が下垂体腫瘍と診断し、切除のための手術を行いました。ところが、下垂体腫瘍と診断した部位には脳動脈瘤(2cm)があり、内視鏡操作によって術中に動脈瘤が破裂して出血し、翌日に患者が死亡したものです。

    その後、医療事故調査・支援センターが、「放射線科医師による画像診断を受けていれば脳動脈瘤と分かり、事故が回避できた」との指摘したことを受けて、2700万円を支払うことで示談したものです。

  • 救急和解

    10月4日不適切な薬剤点滴によって患者が死亡して1億円で和解

    大阪府高石市の高石藤井病院で、高校3年の女子生徒(当時18)が医師の不適切な点滴投与後に死亡したとして、両親が、運営する医療法人と医師に対して約1億2700万円の損害賠償を求めた訴訟(大阪地裁)において、1億円の賠償義務を認めた和解が成立しました。

    患者は2015年12月、食事後に目が腫れるなどの症状が出たため、同病院の救急外来を受診しました。食物アレルギーと診断され薬剤の点滴投与を受けた後に頭や胸の痛みを訴えて意識を失い、約3時間後に死亡していました。

    両親は「必要のない薬剤を過剰投与されたため死亡した」として訴訟提起していました。

    和解条項では、病院側が診療に落ち度があったと認めて謝罪、両親に1億円を支払う。全職員が参加する講習会で今回の件を取り上げて意識向上に努めるなど、再発防止策も盛り込んだ。医療法人の担当者は「ご遺族には心からおわび申し上げる」としている(2017年10月4日朝日新聞・西日本新聞等)

  • 看護士示談

    9月12日

    高知県の町立檮原病院で2017年6月、入院中の80代の男性患者が病院食を喉に詰まらせ死亡しました。檮原町は医療ミスを認め、遺族と和解し約2544万円の損害賠償を支払うことで遺族と示談しました。

    男性患者は誤嚥性肺炎で6月7日に入院しましたが、食事に際しては看護士の介助が必要な状態でした。同月11日、看護師が食堂で昼食を配膳してからナースコールを受けたため、10分ほど男性のそばを離れてしまいました。その間に患者が自分で食事をして喉を詰まらせたというものです。当時、食堂には他の患者2人がいたものの、他の看護士はいませんでした。そのため同病院は、患者を残して食堂を離れたのは不手際だったと認めたものになります(2017年9月12日産経新聞)

  • 内科肝炎和解

    9月8日

    高山赤十字病院が2007年10月、CT検査で腫瘍を見落とした結果、翌年に女性患者(75歳)が死亡した事案について、遺族が日本赤十字社に対して約5700万円の損害賠償を求めた訴訟で、医師の注意義務違反を認めて450万円の支払いを命じた名古屋高裁判決が確定しました。

    女性はC型肝炎ウイルスに感染して通院治療を受けていました。2007年10月のCT検査画像で肝腫瘍が読み取れたにもかかわらず、医師が見落としたものです。女性は2008年11月に死亡したものです。遺族はCT検査時に医師が腫瘍に気づき、切除手術などをしていれば延命できたとして、11年1月に岐阜地裁に提訴していました。

    2015年4月の地裁判決、2017年2月の名古屋高裁判決ともに、CT検査画像で肝腫瘍を発見できたとして、医師の注意義務違反を認定した上、発見が遅れたことで女性が適切な治療を受けられなかったとして、病院側に慰謝料450万円などの支払いを命じていました。病院側は最高裁判所に上告したが受理されなかったため、名古屋高裁判決が確定したものです(9月8日付け朝日新聞)。

    注意義務違反がなければ死亡という結果を回避できたという高度の蓋然性までは認められないものの、いわゆる相当程度の可能性を認定して慰謝料の支払いを命じたものと思われます。C型肝炎は薬害C型肝炎訴訟が提起された2002年当時は、まだまだ治癒することが難しい疾患でしたが、その後、治療法はかなり進展しています。最近はいわゆるインターフェロンフリーによって大半のケースについてウイルス排除できるようになりました。一方でウイルス排除できた場合も定期検査は必須ですし、ウイルス排除できない慢性肝炎や肝硬変では当然ながらきちんとフォローアップする必要があります。本件はCT検査の見落としという重大な過失があった極めて残念なケースといえます。

  • 脳外科判決

    8月2日もやもや病の経過観察不十分による脳梗塞発症に6600万円を賠償

    名古屋地方裁判所は2日、医師の診察が不十分であり適切な処置を怠ったとして、愛知県刈谷市の刈谷豊田総合病院に対して、約6600万円の支払いを命じました。

    患者は6歳の女児でした。2011年10月18日、頭痛を訴えて救急搬送されたところ、「もやもや病」の疑いと診断されて入院しましたが、23日にけいれんの症状を起こし、翌24日に手術が行われたが、同31日に死亡したものです(2017年8月3日読売新聞等)。

    「もやもや病」とはウィリス動脈輪閉塞症ともいい、頭蓋内主幹動脈の進行性閉塞性変化を呈する疾患であり、発症年齢は2極化しており、5歳から9歳、そして45歳から49歳の女性によく発症することで知られています。

    2009年には「もやもや病診断・治療ガイドライン」も出されています。

    本件では、けいれんを起こすまでに頭痛や吐き気など頭蓋内の圧力が高まっていることを示す症状が出現していたにもかかわらず、経過観察が不十分であったため、頭蓋内圧が適切に管理されなかったことから注意義務違反が認定されたものです。因果関係についても、この注意義務違反の結果、脳梗塞は広範囲に及んだものであるから、適切な処置が行われていれば死亡した時点で生存していた高度の蓋然性があると判断したものになります

  • 消化器内科和解

    7月20日ERCP後すい炎を発症して死亡したケースについて3800万円で和解成立

    糸魚川総合病院で内視鏡検査を受けた後、ERCP後すい炎を発症して死亡したケースについて、3800万円を支払う和解が新潟地方裁判所で成立しました。
    訴状によると、男性はすい臓がんの疑いがあり、2015年10月にERCP検査を受けたところ、検査による合併症であるすい炎を発症し、4日後に死亡したものです。
    遺族(原告)は、患者が検査の1時間後に腹痛を訴えていたのに、担当医が適切な措置をしなかったと主張していました(2017年7月20日付け朝日新聞)。

  • 産婦人科示談

    5月8日子宮体がん手術による大量出血で女性死亡して250万円を賠償

    愛知県半田市は5月8日、市立半田病院でがん手術中の事故によって死亡した60代女性の遺族に対して、金250万円の損害賠償を支払うことを公表しました。

    2015年8月、産婦人科統括部長だった50代男性医師の執刀で、子宮体がんの女性から子宮などを摘出する手術をしました。リンパ節に見つかった微少な出血を電気メスで止めようとした際、下大静脈分岐部を損傷したため大量出血。止血を試みたが完全には止血できずに手術を終了せざるを得ず、女性は翌日、出血性ショックで死亡したものです(2017年5月8日付け朝日新聞、5月9日付け毎日新聞)。

    病院側は、「止血方法が明らかに間違っていたとは言えず、重大なミスはなかった。遺族にも事故の経過を説明し、納得してもらった」としており、解決金として支払われたものです。
    市立半田病院の医療事故としては、2011年、胆のうがんの検査結果について主治医が見落とし、治療が1年9か月遅れて患者が死亡したケースについて3000万円の賠償金を支払ったケースがあります。

  • 外科

    4月28日28年前の手術のドレーンが残遺、鹿児島大学病院が謝罪

    鹿児島大病院(鹿児島市)は28日、28年前に外科手術した女性患者(当時30歳代、現在60歳代)の体内に医療器具を置き忘れていたことを明らかにしました(2017年4月28日朝日新聞、読売新聞等)。

    女性は1989年に外科手術を受けていましたが、昨年8月に同病院において別の疾患に関してCT検査を受けた際、体内に異物があることが判明したものです。同病院の事故調査委員会がCT画像や手術をした当時の記録を調べたところ、手術の際に血液などを体の外に排出する管「ドレーン」を体内に残したままだったことがわかり、患者に謝罪して公表しました。鹿児島大学病院は4月3日ホームページにおいて本件医療事故について公表しています。

  • 泌尿器科示談

    4月20日膀胱結石術で大腸を傷つけ2200万円で示談

    静岡市は19日、市立清水病院(清水区宮加三)で医療ミスがあり、亡くなった患者の遺族に賠償金2200万円を支払うことで合意したと発表しました。

    昨年3月、清水区に住む膀胱結石の男性患者(当時91歳)を手術した際、尿道を広げる金属製器具で過って大腸を傷つけた結果、開腹手術が必要になり、人工肛門(こうもん)を設けました。患者は血圧の低下など一時危険な状態になったが回復し、一般病棟に入院中の6月に肺炎で死亡しました。

    病院は「医療ミスにより、患者の体力低下を招いた」として、死亡との因果関係を認めて遺族に謝罪して、26日に開かれる臨時議会に賠償金を盛り込んだ補正予算案を提案しました(2017年4月20日朝日新聞)。

  • 泌尿器科判決

    4月19日直腸癌手術後に患者が徘徊して死亡に1260万円の賠償命令

    山梨県甲斐市の男性(当時83歳)が、がんの手術後に幻覚や妄想などを伴う「術後せん妄」を発症し徘徊して死亡したのは、山梨病院(甲府市)が適切な防止措置を取らなかったためとして、遺族が損害賠償を求めた訴訟で、甲府地方裁判所(峯俊之裁判長)は約1260万円の支払いを命じました。

    男性は2010年2月24日、直腸がん切除手術を受け、翌日深夜に術後せん妄を発症してカテーテルや酸素マスクを外し病院を徘徊。1階待合室で心肺停止の状態で発見され、間もなく死亡したというものです。

    判決は、80代以上は術後せん妄の発症頻度が特に高いとされていることに触れ「徘徊行動の具体的予見は困難でも、カテーテルを抜くなどの行動は予見できた」と指摘した上、「病院側は防止措置や術後せん妄に関する必要な検査を怠った過失があった」と判断したものです(4月19日共同通信)。

  • 産婦人科示談

    3月25日子宮筋腫手術で女性死亡し4247万円で示談

    山形県北村山公立病院(東根市)は23日、昨年3月に女性(50歳台)が子宮筋腫の手術後に容体が急変して3日後に死亡する医療事故があったと公表しました。病院組合議会の定例会で報告され、遺族への賠償金4247万円を含む補正予算が可決されました(3月24日朝日新聞)。

    北村山公立病院はホームページで事故の概要と改善策を公表しています。それによると、女性患者は平成28年3月16日、子宮筋腫の診断にて子宮全摘手術及び両側附属器切除を受けました。同日午後3時35分に病室に帰室しましたが、1時間後の午後4時35分に顔面蒼白、嘔気を訴えました。腹腔内出血を認めたため、午後7時40分に再開腹し止血を行ったものの、3月17日DICの集中治療が必要となり、山形市内の病院に転送され、3月19日に多臓器不全の診断にて死亡したものです。

    原因は、術後腹腔内出血・術後管理であり、今後の再発防止としては、術後管理に関して、「主治医は麻酔科医及び他科医師との連携と意思の疎通を十分に図り、より早期に適切な治療方針決定がなされる体制を整える」、「術後出血が予測される症例に対しては、ドレーンを留置する取り扱いを徹底する」としています。

  • 外科示談

    3月22日頸部腫瘍切除術で説明が不十分だったとして中津市民病院が560万円を賠償

    中津市民病院が2015年9月に行った外科手術で起きた機能障害を巡り、女性患者(60歳台)への事前説明が不足していたとして、560万円の賠償金を支払うことが明らかになりました。

    患者は左頸部の神経に腫瘍があったため切除手術をした後、左腕が肩までしか上がらなくなるなどの障害が起き、1年以上リハビリをしましたがが、回復しなかったもの。

    病院は手術前に女性側に「神経を一部切断するので、しびれや痛みが発生する可能性はある」と説明していましたが、しかしここまでの障害が起きる可能性には言及していなかったというものです(3月22日毎日新聞)。

    説明義務違反としては比較的高額の慰謝料となっており、発生した障害の大きさ等も考慮した損害額と思われます。

  • 脳神経外科判決

    3月14日脳出血後の急性肺血栓塞栓症で患者死亡し2470万円の賠償命令

    霧島記念病院(鹿児島県霧島市)が、肺に血栓が詰まる肺塞栓の検査や治療を怠ったとして、死亡した男性患者(当時76歳)の遺族が損害賠償を求めた訴訟の判決で、鹿児島地方裁判所(鎌野真敬裁判長)は3月4日、約2470万円の支払いを命じました。

    患者は平成24年11月13日、脳内出血で同病院に搬送されて入院しましたが、翌月に急性肺血栓塞栓症で死亡していたもの。

    判決は、「遅くとも死亡の数日前までには症状が認められたのに、必要な検査と治療を怠る過失があった」と判断したものです(3月14日産経ニュース)。

  • 外科訴訟和解

    2月16日必要な諸検査を実施せず悪性腫瘍を見落としたとして700万円で訴訟上の和解

    左足にできた悪性腫瘍で平成26年に死亡した患者(当時17歳)の遺族が「担当医の誤診により適切な検査がされなかった」として、1000万円の損害賠償を求めた訴訟(大阪地裁・山地修裁判長)において、医療機関が金700万円の解決金を支払う内容にて和解が成立しました(2月16日産経新聞)。

    患者は中学3年だった24年10月、休み時間に学校の校庭でサッカーをしていた際に転倒して左大腿骨を骨折して、救急車で大阪府済生会野江病院に搬送されました。

    骨折の治療を受けて退院した後も、左太ももの痛みと腫れが引かないために何度も受診したにもかかわらず、病院側は骨折に伴う症状との診断を変えなかった。そこで患者が別の病院を受診したところ、25年3月に悪性腫瘍と診断されたものです。同年5月には左足の切断手術を行ったものの、悪性腫瘍は肺や脳に転移しており、患者は26年12月に死亡しました。

    訴訟で遺族側は、病院側が骨折と即断して、適切な検査もせずに放置したと主張。病理検査を尽くしていればすぐに左足の切断手術ができ、転移を防ぐことができたと訴えていました。

  • 泌尿器科整形外科訴訟和解

    2月10日腎結石治療後に両足麻痺の障害が後遺したケースについて1966万円で訴訟上の和解

    名古屋市立東部医療センターで腎結石の治療をした女性患者(当時60歳台)に両足麻痺の障害が後遺して死亡したとして、遺族が約1億円の損害賠償を求めていた訴訟において、東京地方裁判所で金1966万円を支払う内容で和解が成立しました(2月10日毎日新聞)。

    患者は平成21年10月21日、名古屋市立東部医療センター東市民病院泌尿器科において、4回目の体外衝撃波結石破砕術を受けたところ、腰背部痛・両下肢知覚鈍麻が出現し、両下肢不全麻痺の障害が残ったもの。そして患者は平成22年6月23日、粟粒結核により死亡しました。

    脊椎を保護するため患者が装着していたコルセットを治療時に長時間外したため、神経を損傷した可能性が高いと主張していたものです。死亡との因果関係は認められないものの、後遺障害との因果関係は一定程度加味された金額のようです。

    なお、名古屋市は2月9日、ホームページで和解成立について公表していました。そして、再発防止策として、「電子カルテの活用方法を改善して重要な情報の共有をより一層図るほか、 1人の患者の治療に複数の診療科が関連している場合等は、関連診療科が相互に密に相談を行うように改めて周知するなどして、十分に連携して診療を進めるように努めている。」としていますので、泌尿器科と整形外科の連携不足が問題とされた事案と思われます。

  • 消化器内科訴訟和解

    1月28日大腸X線検査でバリウムを膣の誤注入して後遺症が残ったケースについて547万円で訴訟上の和解

    春日井市民病院が女性患者(当時79歳)にX線検査用バリウムを誤って膣内に注入した結果、腹痛等の後遺症が残ったとして、患者が市と担当医師に対して損害賠償を求めた訴訟において、名古屋地裁(朝日貴浩裁判長)は1月27日、腹痛は誤注入による後遺症と認め、547万円の支払いを命じました(1月28日朝日新聞)。

    女性は2012年7月、血便を訴えて入院して大腸X線検査を受ける際、看護師が、肛門に注入すべきバリウムを誤って膣内などに注入したというものです。女性は2013年2月に退院したものの、体内に残ったバリウムのため、排便時に腹痛を起こすなどの後遺症が残ったと主張していました。

  • 皮膚科形成外科判決

    1月26日重症熱傷患者を転院させなかった過失を認めて220万円の賠償命令

    全身やけどを負った患者(当時29歳)が亡くなったのは、県立宮崎病院の対応が原因として、福岡市に住む両親が県に損害賠償を求めた訴訟において、宮崎地裁(五十嵐章裕裁判長)は1月25日、で病院側の過失を一部認め、両親へ220万円支払うよう命じました(1月26日宮崎日日新聞)。

    患者は2011年3月22日、自宅浴槽で首から下にやけどを負い、意識を失って同病院に救急搬送されました。その後、31日に手術に対応できる宮崎大医学部付属病院に転院しましたが同年4月20日に死亡したものです。

    判決は、男性の全身管理を優先し、転院準備を行ったのが3月29日であることに対し「手術には転院が避けられないと認識した3月22日の時点で、準備を行わなかったことには過失がある」と指摘したものです。

2016年

  • 産婦人科判決

    5月27日帝王切開後の大量出血で妊婦死亡に7000万円の賠償命令

    静岡市内の妊婦(当時24歳)が帝王切開術を受け死亡したのは静岡厚生病院(同市葵区)が適切な処置をしなかったのが原因として、遺族らが病院を運営するJA静岡厚生連と担当医3人を相手に慰謝料など約9262万円の損害賠償を求めた訴訟で、東京高等裁判所(富田善範裁判長)は、約7490万円の支払いを命じました。

    「過失と死亡結果との因果関係は認められない」とした一審の静岡地裁判決を取り消し、遺族側の逆転勝訴となったものです。

    女性は2008年4月27日、陣痛を訴えて同病院に入院。胎児の死亡と、胎盤が子宮壁から剥がれていることが確認されたため帝王切開の手術を受けたが、大量に出血して同日午後に死亡しました。

    判決は、担当医が把握していたよりも多くの出血があったと指摘した上、輸血量も「極端に少なかった」と判断しました(2016年5月27日静岡新聞)。