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古賀克重法律事務所 医療ミス・医療事故 相談事例・実績

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上部内視鏡検査を受けていた患者が前処置としての局所麻酔(キシロカイン)の投与によりショック死

上部内視鏡検査を受けていた患者が前処置としての局所麻酔(キシロカイン)の投与によりショック死した場合、担当医師らに問診義務違反、観察義務違反、救命措置義務違反があったとして、病院に対する損害賠償請求を認めた判決

内視鏡検査とは、消化管、気管、膀胱、尿管、腹腔内などの症状の観察を器具を使用して実施する検査をいいます。一般に広く利用されており、検査自体は危険ではありませんが、検査前の局所麻酔の投与によってアナフィラキシーショックを起こすことがあります。

つまり、内視鏡検査の前処置として投与されるキシロカインの添付文書には、重大な副作用として「まれにアナフィラキシーショックを起こしたとの報告があるので、観察を十分に行い、このような症状があらわれた場合には、適切な処置を行うこと」とされています。

本件は、患者(50代の女性)が上部内視鏡検査の前処置としてキシロカインの投与を受けましたが、医師が内視鏡を挿管後、患者の容体が急激に悪化して心肺停止となり、死亡したものです。

一審の福岡地裁判決は、脳幹部脳梗塞の可能性もある、救命措置義務違反はないなどとして原告の請求を棄却しました。

これに対して、一審判決には見過ごせない事実誤認があるとして、原告は福岡高等裁判所に控訴しました。

原告は、第三者の麻酔科医師の私的意見書を提出した上、麻酔科医師の証人尋問を実施しました。

医師は、本件はアナフィラキシーショックと考えるべきであること、既往症のない若い女性が突然脳幹部脳梗塞で急死したとは到底思われないこと、キシロカイン投与前にきちんとした問診を行い、投与後もバイタルサインを含む経過観察を行えば死亡という結果は回避できたはずであると証言しました。

福岡高裁は、死因は高度の蓋然性を持ってキシロカインショックによる心不全であると認められるとした上、問診義務違反、救命措置義務違反があると判断して、病院に対して2800万円余りの賠償金の支払いを命じたものです(高裁で確定)。

本件のもう一つの大きな争点は、心電図モニターの記録用紙が紛失していたほか、患者の血圧・脈拍等のバイタルサインの推移を示す記録が一切残されていなかったことです。

原告は一審から証拠隠しであると厳しく追及しました。

福岡高裁は、異常な事態であると断じた上で、「医療機関が、客観的資料を何一つ提出できないという事態は、救命措置現場の混乱ぶりを如実に示すとともに、何らかの不自然さを拭うことができないばかりでなく、本件訴訟における注意義務違反の立証に関する不利益を医療機関が負うべきである」と厳しく指摘しています。

本判決は、判例タイムズ(1239号275頁)、判例時報(1943号33頁)など主要判例雑誌に掲載されています。

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