ギランバレー症候群患者 転送時の呼吸管理の過失
- ギランバレー症候群とは、手足の筋力低下が急速の発症・進行する神経系障害です。治療方法としては、血漿交換方と免疫グロブリン大量静注療法の有効性が確立しています。同症候群は、神経疾患の中でも機械呼吸不全が発生する典型であって、十分な呼吸維持に配慮することが最重要とされます。
- 新入社員であった患者(20代男性)は、会社の寮でギランバレー症候群を発症して、千葉の被告病院で入院治療を受けました。約2ヵ月後、被告病院から地元福岡の大学病院に転送中、患者は心配停止によって、無酸素脳症による四肢体幹機能障害を後遺したものです。
- そのため、原告が転院時期選択における注意義務違反、転送時の呼吸管理の注意義務違反等を主張して損害賠償請求訴訟を提起しました。
- 被告病院は、転院は家族の希望であったと事実関係を争うほか、転送時の呼吸管理にも問題なく、機序も迷走神経の過反応である等と争いました。
争点は下記の通り多岐に渡りました。
- 転院時期選択における注意義務違反
- 転院時の呼吸管理における注意義務違反
- 説明義務違反
- 因果関係(機序)
相手方の医師尋問、後医の尋問、鑑定を経て、福岡地裁は、原告の請求を認容し、金8665万2317円、両親固有の慰謝料各132万円の支払いを命じました。
被告病院は控訴せず、福岡地裁判決が確定しています。
本判決は、判例タイムズ(1258号272頁)、判例時報(1993号36頁)など主要法律雑誌に掲載されています。