腰椎椎間板ヘルニアに対する仙骨硬膜外ブロックでアナフィラキシーショックを起こし、患者が後遺障害1級を後遺した
【事案の概要】
腰椎椎間板ヘルニアに対する仙骨硬膜外ブロックを受けた患者が直後から両四肢の痺れを訴え、呼吸停止を起こし、その後の処置が遅れたため、患者(50代・男性)が終生に渡り寝たきり状態になって、後遺障害1級を後遺したという事案です。
【裁判の経過】
ご家族から依頼を受けて医療調査から示談交渉に進みましたが示談に至らず、福岡地方裁判所に提訴しました。
硬膜外ブロック後に、患者に意識障害や血圧低下を生じ、局所麻酔薬アレルギー(アナフィラキシーショック)や何らかの中毒等が疑われる場合には、呼吸停止による低酸素脳症等による重大な結果を後遺しないよう、直ちに措置を開始しすべき注意義務を負担しているというべきです。
具体的に取るべき措置や因果関係について医学文献にて主張立証しました。
また患者は自営業者でしたが、実収入について少なくない額の争いもありました。休業損害や後遺障害逸失利益の基礎収入について、家族の陳述書・通帳等によって主張立証しました。
さらに損害額としては将来の介護費用について争いになりました。
双方主張立証をした後、医療機関も過失を前提にした損害協議に応じ、最終的に既払い金を除き1億3000万円にて和解成立しました。
【ポイント】
裁判上の和解に至り、家族から「担当医の謝罪を求めたい」という要望が出されました。
主治医も受け入れて、当初は裁判所での和解成立時の謝罪も検討しました。ただコロナ蔓延の時期だったため、多人数が集まることは差し控えることなり、先行して和解を成立させ、和解調書に謝罪条項を入れました。
その上で新型コロナのまん延防止等重点措置が切れた後、原告被告ら関係者が日程調整して、正式に謝罪の場を設けました。
主治医からは真摯な謝罪が行われましたが、一方、家族からの「これで病院としては一区切りかもしれませんが、私たちにとってはこれからが始まりなんです」、「二度とこういうことが起きないように治療にあたってください」という言葉がとても重たい事案でした。