特別養護老人ホームで嘔吐・呼吸苦など体調不良を放置したにもかかわらず転院させずに死亡
特別養護老人ホームに入所している70代後半の患者が、嘔吐、呼吸苦を訴え、さらにその後、喘鳴・咳・Spo2の低下が見られたにもかかわらず、施設が適切な治療を行わず、また医療機関に転院させることもしなかったため、患者が死亡したケースについて1000万円の示談が成立
患者は特別養護老人ホームに入所していましたが、健康状態には問題ありませんでした。
ところが、一度トイレからコールして職員が訪れると、昼食をそのまま嘔吐しました。患者は「むかむかする」「頭が痛い」「フラフラする」と訴え、冷汗があり、顔色も悪かったのですが、体温・血圧・脈拍は通常でした。
その日の体調不良は継続して、夕食も取ることができませんでした。
翌日の夜中にもトイレからコールがあり、治療の嘔吐があり、その後、朝食・昼食もほとんど取れませんでした。
3日目になると、トイレにすわって失禁したり、活気がなく、やはり昼食後に嘔吐しました。
4日目になると、呼吸苦が発症し、喘鳴も頻繁にでるようになりました。見かねた家族が病院への転院を打診しましたが施設は対応しませんでした。しかしこの日の夜にはSpo292%になり、5日目にはヒューヒュー音が聞こえ、喘鳴も醜くなったにもかかわらず、医療機関に転院させなかったため、その日の夜に死亡したという事案です。
死亡診断書には直接死因として急性心筋梗塞と記載されました。
遺族から示談交渉を委任して施設側と交渉を開始。
施設側も弁護士委任としましたが、適切な医療措置を行わなかったこと、急変時に救急搬送を行わなかったことについて、過失(注意義務違反)を認めるに至りました。
一方、解剖していないため死因がはっきりしないこともあり、損害額については争いが残りましたが、最終的に1000万円にて示談が成立しました。
高齢化社会を受けて医療・介護施設の分野でも高齢患者の事故が増えています。「転倒・転落」、「誤嚥・栄養管理」、「感染症・褥瘡」などが典型例ですが、本件のように介護施設による状態観察が不十分であり、思わぬ死亡という結果になるケースも少なくありません。