内視鏡 絞扼性イレウス見落としの過失による死亡
腹痛を訴え病院に救急搬入された60代の男性が絞扼性イレウスで死亡した場合、病院の医師に絞扼性イレウスを見落とした過失があったとして、病院側の損害賠償責任を前提にして、金3500万円の和解が成立した事案
急性腹症とは「急激には発症して腹痛を主訴とする疾患の総称」と定義されます。
急性腹症と呈する疾患には、開腹手術を要しないものもあれば、緊急手術あるいは原因疾患の診断がつかない時点においても試験的に開腹しなければ救命しえないものがあります。
したがって、急性腹症を呈する患者の管理は、患者の救命を第一の目標として、救命を目的にする基本的処置を診断面と治療面から総合的に臨機応変に行わなければならないとされています。
そして、イレウスは、急性腹症全体の15から20%の頻度で見られるとされています。
本件は夕食でヒラスを食べた2時間後に激しい腹痛が持続するため、救急車で医療機関を受診しました。
そして救急外来では腹痛・圧痛のいずれも認められ、腹部立位レントゲン写真でも左右に鏡面像を認めて、腸管内に水分とガスの貯留がうかがえました。したがって医療機関としては、この時点でイレウスを疑うべきであり、外科にコンサルトした上、救命第一の目標として、緊急開腹手術のタイミングを計るべきでした。
ところが医療機関は、小腸アニサキス症のみを疑い、3~5日間の保存治療を選択したため、患者が死亡したものです。
医師尋問、裁判所鑑定を経て、裁判所の有責所見を前提に、金3500万円で勝訴的和解が成立しました。