脊椎後方固定術の際、骨セメント漏出させて下半身麻痺を後遺した
脊椎後方固定術の際に骨セメントを漏出させた結果、下半身麻痺の1級障害を後遺したケースについて訴訟前の示談が成立したケース
脊椎後方固定術とは、脊椎固定術の1つで椎弓および棘突起を後方から固定する術式です。
腰椎分離症や分離すべき症などに適応があります。棘突起、棘突起基部、椎弓、椎間関節などの部位で骨溝を作成したり、全体をノミで海綿骨まで露出させて骨移植を行います。
本件はその術中に骨セメントを漏出させてしまい、両下肢体幹機能障害1級の後遺障害を後遺してしまった結果、患者が寝たきりを余儀なくされたという事案です。
手術前には何ら障害がなく社会人として稼働していましたが、手術後にはいわゆる寝たきりになってしまい、収入も全て閉ざされてしまっていました。
患者は病室を出ることさえ困難という状況でしたので、私が病室を数回訪問してヒアリングした上、医療調査を行いました。
患者は、「死ぬよりも生きている方がよほどつらい。それでも私は生きていかなければならないんです。生きていく以上は、人間らしい生活を保障してください」と強く訴えておられました。
まず医療調査の時点において、骨セメントを漏出させるという合併症の症例は見当たりませんでしたが、第三者の協力医にも意見をもらい、重大な医療事故であるという評価で一致しました。
そこで医療機関に対して損害賠償請求をすることになったものです。
数回の折衝を通じて、医療機関側も有責を前提に損害額を上積みして示談成立となりました。
術前の合併症に対する説明も不十分であったほか、術後の対応にも不安を感じておられましたが、無事満足のいく示談となり、ご家族ともども喜んで頂けたケースでした。