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古賀克重法律事務所 医療ミス・医療事故 相談事例・実績

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腹部大動脈瘤破裂を見落とし患者が死亡

患者が腹部痛・嘔吐を訴えて緊急入院し、造影CTを受けて切迫破裂の症状があったにもかかわらず、医療機関が見落としたため、翌日死亡したケースについて、福岡地裁に損害賠償請求訴訟を提起して600万円で和解が成立した事案

大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドラインによると、5cm以上の動脈瘤は破裂の危険があり、外科的治療が優先されます。また、瘤増大に伴う疼痛は、瘤破裂の前兆あるいは破裂の兆候であるとされて緊急手術の対象とされています。

本件において、患者の腹部CTでは、腹部大動脈瘤の最大径が7cm大と報告されていたことからすると、緊急手術を実施可能な医療機関に転送し、緊急手術を受けさせるべきだったと主張しました。

裁判所も和解案において、この点の注意義務違反を認定する可能性が高いと指摘しました。

一方、腹部大動脈瘤緊急手術症例については、死亡率17.9%とする論文もありますが、死亡率30%以上という文献もあり、死亡率が60%近くに上ったとする論文もあるため、死亡を回避できた高度の蓋然性があったとまでは認められませんでした。

前述の各論文・症例報告は、腹部大動脈瘤の緊急手術においても生存率がそれなりにあることを示しているほか、患者の容体が比較的安定していたこと、腹腔内に大量出血を来す状態ではなかったことから、裁判所は、早期に転送していれば患者を救命できた相当程度の可能性はあったと判断して、600万円の和解勧告を行い、和解が成立したものです。

因果関係の「相当程度の可能性」については、平成12年最高裁が、「20%以下だが救命できた可能性は残る」とする鑑定書が提出されている事案において、医師の損害賠償責任を認めた原審の判断を是認しています。

また、平成15年最高裁も、重大な後遺症が残らなかった可能性の存否について、「死亡者を含めた全体の約23%には中枢神経後遺症が残らなかった」という統計数値や「完全回復率が22.2%で残りの77.8%の中には軽症の者も含まれている」という統計数値は、重大な後遺症が残らなかった相当程度の可能性が存在することをうかがわせる事情であると判断しています。

以上からすると、「20%前後の可能性であっても、それを保持する利益は法的保護に値する」と考えられており(医療訴訟・最新裁判実務体系2・656頁など)、本件において、少なくとも相当程度の可能性があったことは明らかだったといえるでしょう。

その上で患者の容体等の具体的な事情に照らして、相当程度の可能性侵害の慰謝料としては比較的高額の和解が成立したものであり、ご遺族からも「本当にありがとうございました。無事解決してほっとしています」という言葉を頂きました。

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