腹部造影CTのため造影剤を注入する際、空気誤注入によって脳塞栓を引き起こした
腹痛の患者に対して腹部造影CTのため造影剤を注入する際、空気誤注入によって脳塞栓を引き起こして右半身の感覚障害を後遺したケースについて1100万の示談が成立
腹痛を訴えて来院した患者に腹部造影CTを実施するため造影剤を注入しようとした際、患者が、呼吸困難・腹部不快感・頭痛・右半身の感覚障害を訴えたものです。
医療機関が緊急CTを取ったところ、心室内に空気が認められたため、患者は空気塞栓の疑いで緊急入院しました。
その後、患者は内科治療を継続しましたが、右半身の感覚障害を後遺しました。
患者・家族からご相談を受けて、損害賠償請求事件として受任して医療機関と交渉を開始しました。
血管造影とは、血管の中にカテーテルという細いチューブを入れ、血管内に造影剤を注入して血管のX線写真を撮影する検査です。血管造影検査は、病気の正常や範囲など治療するにあたって必要な情報を知るために行います。なおカテーテルは直径1~2mm程度のポリエチレンやポウレタン製の柔らかいチューブで、造影剤はヨード造影剤を使用します。
医療機関が、腹部造影CTを実施するために、造影剤を注入する際には、慎重に造影剤を血管内に注入するまどして、空気を血管内に混入させないように配慮すべき手技上の注意義務を負担します。この点について注意義務違反があると判断した上、損害としては、後遺障害7級「神経系統の機能に障害を残し、軽易な労務に服することができないもの」に該当するとして、後遺症慰謝料1051万円ほか逸失利益などを請求しました。
医療機関は最終的に責任については認めたものの、後遺障害は心因的なものだとして争いましたが、最終的に1100万円にて示談が成立したものです。