IVHカテーテル挿入の際、皮下血腫を生じ、呼吸困難・血圧低下・循環不全によって死亡
NK細胞性白血病の患者に対して中心静脈高カロリー輸液(IVH)カテーテルを挿入した際、血液の逆流が認められたため抜去して圧迫止血したものの、皮下血腫により呼吸困難が発生し、その後血圧低下・循環不全によって死亡したケースについて300万円の示談が成立
患者はNK細胞性白血病の治療の一環として中心静脈高カロリー輸液(IVH)カテーテルを挿入されていました。
IVHカテーテルは、各種薬剤を注入し、透析療法を施行するために必要となる血管確保を目的とするものです。
カテーテルの挿管を試みた際、浮腫があるため挿入困難となり抜去しましたが、呼吸苦が出ました。
血腫による呼吸困難が進行していると考えられ、気管挿管を行い人工呼吸管理せざるをえませんでした。
その後、出血性ショックにより死亡しました。
重篤な疾患でしたが生存したケースもあり、その可能性を追求できなかったという意味でも患者・遺族にとって残念な医療事故。そこで私がご遺族から依頼を受けて医療機関と示談交渉することになりました。
この点、まずカテーテル挿入直後にショック状態に陥り、その状態が改善しないまま患者が死亡したものですから、因果関係(機序)は明らかでした。
患者の原疾患から出血傾向が極めて強く、IVHカテーテル挿入によって事故が発生する可能性は予見できましたが、患者・家族に対する説明は不十分でした。診療録には同意を得たとの記載はありましたが、同意書は取られていませんでした。
また出血傾向が高いわけですから、エコーガイド下穿刺法などより安全な手技を検討すべきでしたが、検討されませんでした。
最終的に医療機関が責任を認めて300万円にて示談が成立しました。
NK細胞性白血病は、リンパ球系の細胞であるnatural killer細胞が白血病化したもので、急性化したものでは発熱・脾臓の腫大を示し、血球貪食症候群を合併します。
多彩な症状を示しますが、治療抵抗性があり、急激な経過で死に至るとされています(平均生存期間60日前後)。
このような疾病に元々罹患して治療中であったことをふまえて、損害額としては慰謝料300万円となったものです。