鼻副鼻腔内視鏡手術後に視力障害・眼球運動障害を後遺した
鼻副鼻腔内視鏡手術を実施したところ、40台の女性患者に視力障害・眼球運動障害を後遺し、1000万円にて示談が成立した事案
耳鼻科の鼻副鼻腔内視鏡手術を受けた患者に後遺症が残った事案です。
鼻副鼻腔内視鏡手術(ESS)は、耳鼻科の炎症・腫瘍・外傷など様々な疾患に対する術式として確立された手術です。慢性副鼻腔炎は、抗菌薬など薬物治療と生理食塩液による鼻洗など保存的治療を2~3か月間行い、改善しない場合には、手術療法を検討することになります。
副鼻腔内内視鏡術は上顎洞粘膜を温存するため、Caldwell-Luc法などの従来の副鼻腔根本術に比較した場合、出血量がかなり少なく抑えられ、また、解剖学的な確認が容易であるため術後合併症は比較的少ないと言われています。
それでもESSには眼窩損傷・頭蓋損傷というリスクや視力障害・髄膜炎などの合併症も発生することがあります。
本件は40歳台の女性患者が保存的治療もほとんどないままに、「安全で効果的な手術がある」という説明を受けて鼻副鼻腔内視鏡術を受けたところ、術後に違和感が発生したものです。
数日後、患者が医師に訴えましたが「数日経てば治る」と言われて処置はされませんでしたが、視力障害や眼球運動障害が残ったというものでした。
医師はその後も患者の訴えに向き合わなかったために、当職に委任して示談交渉が開始しました。
医師に面会を求めて説明を求めた際に、説明義務の問題なども指摘したところ、医師自身がトーンダウンして「出来れば円満に解決したい」と発言。
その後、視力障害・眼球運動障害の程度や逸失利益など損害論について複数回やりとりをして1000万円強にて早期示談が成立しました。
過去には副鼻腔内支障術の際に左眼を失明したという医療事故も発生しています(長崎大学病院が公表)。効果的で安全という手術ですが、患者としても十分にリスク説明を受けて手術を受けるか判断していく必要があります。