吸引分娩時に臍帯巻絡により新生児仮死で出生し、低酸素脳症によってその後児が死亡した
吸引分娩時に臍帯巻絡により新生児仮死で出生し、重度の低酸素性虚血性脳症によって、その後児が死亡したという事案です
臍帯巻絡(サイタイケンラク)は、臍帯が胎児の頸部、四肢、体幹に巻きつき絡んでいる状態をいいます。臍帯過長や胎児の過度の運動により生じると考えられ、頸部に生じることが多いと指摘されています。臍帯巻絡は分娩時に胎児血行障害を起こし、胎児仮死の原因となることがあります。一方、一般的には緩く巻いている程度のことも多く、臍帯巻絡が直接胎児に障害を起こすことは少ないという指摘もあります。
本件は医療調査を経て損害賠償請求を受任して、相手方医療機関に対して、損害賠償請求と示談の申し入れを行いました。
事前の医療機関による説明会、そして協力医の意見を下に、適切な経過観察によって胎児機能不全と診断できたにもかかわらず急速遂娩の準備をしなかった点や看護師から医師への報告が著しく遅れた点などを注意義務違反(過失)として構成して損害賠償請求しました。
その後、医療機関側の弁護士と数度の書面による主張・反論を経ました。
医療機関側は過失自体を争っていましたが、そ双方ともに訴訟を避けて早期円満解決を図ることにて一致して、5000万円弱にて示談が成立したものです。
臍帯巻絡自体は分娩過程においてよく見受けられるものですが、医療過誤において主たる争点として争われた裁判例では結論が分かれています。
事例に応じて事実関係を丁寧に分析しつつ、事案に応じた適切な過失構成を行っていくことが特に必要になる医療事故類型といえるでしょう。