シリコンバック挿入による豊胸手術の手技ミスにより再手術を余儀なくされた
シリコンバック挿入による豊胸手術を受けたところ、炎症と痛みが発生して長期間に渡る治療と再手術を余儀なくされ、500万円強にて示談が成立した事案
シリコンバック挿入による豊胸手術を受けた患者が度重なる再手術を余儀なくされた事案です。
患者がシリコンバック挿入による豊胸手術を受けた後から炎症と痛みが発生しました。その後、左乳房が拘縮していると診断されてシリコンバックの入れ替えの再手術を余儀なくされました。
ところが再手術の際にも患者は痛みを訴えます。再手術によって血腫が発生していることが判明して、さらに長期間の経過観察が必要になったものです。
豊胸術にはいくつかの方法があり、ヒアルロン酸、シリコンバッグ、自家脂肪移植が主流になっています。
この点、シリコンバックによる豊胸は、効果が持続し、乳房に大きな変化を期待できる方法とされています。一方において、カプセル拘縮、インプラントの位置異常、破損、感染症などの合併症も数多く報告されているところです。
本件では最初の手術前にごく簡単な同意書は取られていましたが、整形外科医は患者に対して、合併症についてほとんど説明しておらず、むしろ「皆がやっている簡単な手術だから心配ない」と断定して手術を勧めていました。
拘縮が発生した際にも、「しばらく様子を見れば大丈夫」などその場しのぎの説明を繰り返したため、解決が長引きました。
また再手術の際にもリスクの説明が不十分だったというものです。
当職が示談交渉から依頼を受けて、美容整形側と交渉したところ、責任を認めるに至ったものです。損害額については当初開きがありましたが、最終的に500万円強(通院慰謝料・休業損害。なお慰謝料では争いのある後遺障害について考慮)にて双方が歩み寄って示談が成立した事案になります。
美容整形の法律相談は増え続けている分野ですが、術後の状態について「主観的評価」が関連することもあり、法的責任の指摘が難しいことも少なくありません。また美容整形外科側も強く法的責任を争うケースがあります。
豊胸術も本件のような「シリコンバック」ではなく「脂肪注入」の場合であっても、石灰化、肉芽腫、脂肪壊死、感染症など異なる合併症が発生します。
患者側としても、施術前には十分にリスクについて説明を受けた上で納得して手術をするか否か選択することが必要になります。
万が一、術後に合併症と思われる症状が出た場合には、写真(一定期間をおきながら経時的に)にて証拠保全した上、総合病院・大学病院など第三者の診断を受けた上で整形外科側と折衝することも場合によっては必要になるでしょう。