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古賀克重法律事務所 医療ミス・医療事故 相談事例・実績

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肝臓癌に対する肝切除術の際、大量出血したにもかかわらず手術を続行し、適切な輸血もしなかったため患者が低酸素脳症による意識不明

肝臓癌に対する肝切除術において大量出血したものの、出血を予見して輸血の体制をとっておくべき注意義務違反に反したとして2500万円の示談が成立した事案

患者(70代)は肝臓癌の手術を受けて腫瘍摘出はできたものの、術中の大量出血によって意識不明になり、その後も意識が回復しなかったものです。

医療機関は、肝臓離断術を開始後、離断面からじわじわと出血したため、止血(圧迫・焼灼)と離断を繰り返しました。

いったん脈拍低下と血圧低下があったため、手術を中止し、急速補液や昇圧剤を行った結果、脈拍・血圧が何とか回復したため、手術を再開します。

その後も出血が続き、輸血等を行い、肝腫瘍の摘出を行い手術は終了しましたが、術後から、徐脈・血圧低下となり、ICUに運ばれ心マッサージを受ける事態に陥ったものです。

手術時間は8時間弱、出血量は8500ミリリットル弱に達しました。

本件手術では患者の既往歴などから大量出血も事前に予測されましたが、医療機関は2000ミリリットル程度の輸血しか準備していませんでした。そのため出血後、術中にきゅうきょ輸血の追加発注をする事態に陥りました。

その結果、本来輸血は加温して投与することが望ましいとされていますが、急速に輸血を行う必要があったため、追加発注の輸血が到着後、冷たいまま急速投与せざるを得ず、そのことも心停止の一因と推認されました。

そこで、当職が患者家族から依頼を受けて示談交渉を行うことになったものです。

交渉の結果、医療機関はまず過失を認めるに至りました。

つまり、医療機関としては、肝切除術を施行するにあたり、大量出血のありうることを予見して輸血を準備し、輸血できる体制を取っておくべき注意義務、手術に伴う出血の状況を評価して適切医手術を進行すべき注意義務に違反したというものです。

本件では損害論も争点になりました。患者に癌等の原疾患がある場合には、余命等などを主張されることが少なくありません。

本件も当初の提示額は1000万円強でしたが、癌患者の術後死亡ケースの裁判例を複数指摘して交渉しました。例えば、横浜地裁平成17年9月14日判決は、肺がんの疑いで入通院していた患者が、肝がんを発症して食道静脈瘤破裂で死亡した場合に2600万円の慰謝料を認めています。福岡地裁小倉支部平成14年5月21日判決は、胃癌の患者が、胃摘出術を受けたところ、術後急性不全により死亡した場合に、1700万円余りの損害(うち慰謝料1500万円)を認めています。

その結果、最終的に2500万円にて示談が成立しました。

元気だった患者が術後から意識不明になったため、残された御家族の心痛は極めて大きいものでした。福岡県外の事件でしたが、私も病室に足を運んで患者さんを見舞い、医療機関とも面談して示談交渉を進めて早期に解決できた事案です。

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